hann-nya 2021/0821 Tさん

般若古をはじめて受けた。
何をどうしたらよいのか分からないまま中央に座る。
周りにぐるりと古人が座り、般若心経を読む準備をしている。
縁ちゃんが仏説、と口火を切る
みんなが読経をはじめる
私は自分の内にフォーカスし、ゆだねる
右腕が痛くなってきたのでので、さすってみる。
こんなタイミングに、と思ったが、とにかくなるように、あるがままに、を心掛ける。
じっとしていなければ、と思い、さするのをやめて右腕が楽な方へ伸ばしてみた。
左腕が少し痺れてるようなピリピリ弱い電流が流れている感じがした。
左手の中指、親指、人差し指がピクピク動いてるのが分かったがそのままにする。
やがて両腕を強く左右に引っ張られて、捻じ曲げられているような気がしてきた。
その頃に、さあ、出てきなさい、と声が聞こえてきて、
自分の前に、その子が現れた。
名前は、かよ。
8歳の女の子。
腕の痛みだけでなく、怖い目にあったようで、泣いている。
誰も助けに来てくれない、と口から出てくる。
お母さんお父さんを長い事呼び続けても来なかったので、諦めていたようだ。
でもやっぱりお母さんに会いたいという気持ちが溢れてくる。
ふと見えたのは、町の中ほどを流れている川の近くに家がある。
川岸の大きな樹の近くに女の子は居る。
(その女の子の遺体がそこにあるのかもしれない)
なぜこのお姉さんと一緒にいるの?と聞かれる。
いつだろう?と思うが記憶をたどろうとするとぼんやりして分からない。
自分はどこにいるのだろう、来ちゃいけない所に来たのかな、と不安になる
けれども、お母さんが迎えに来てくれると聞いて、会いたい、家に帰りたいという思いがこみあげる。
おじいちゃんおばあちゃん、と聞いた時に、手をつないでもらいながら丘を上がってお寺さんに行ったことを思い出す。
左手の斜面に春の草花がちらっと見えた。
楽しかった、嬉しかった気持ちがでると同時に視界が明るくなってきた。
やや左上のほうから日が挿してきて、やがてまぶしいくらいに明るくなった。
その時、左手が誰かと手をつないでいることに気が付いた。
それは、お母さんだった。横に立っているのを感じる。
女の子はぎゅっとお母さんの手を繋いでいる。
そして安堵とうれしさの中、どんどん体が軽くなっていくのを感じる。
最初は泥の下にいるような冷たい水に触れてる感覚がしていたが、
明るくなるにつれて、ぽかぽか暖かさも感じていた。
そして、最後に、「ありがとう」という言葉がでてきた。
長い事迷子になっていたのが、ようやく安心できるところへ戻っていくことができた。
身体が真上の方へ、吸い上げられるような感覚だった。
ほっとしたのもつかの間、縁ちゃんが手を合わせるように、と言った。
読経が再び始まる。
私は、かよちゃんへの読経だとばかり思っていて、供養がはじまるのかと思った。
間もなく、首が右へ少し傾きはじめた。
身体も少しゆれる。
が、そのままにゆだねていると、顔の右の方に男の人の気配がした。
自分の中に、というか自分自身もさっきまでと感覚が違う。
間もなくして、あなたは誰ですか?と問われたとき、俺?と言いそうになって、
顕在の自分は、何を言おうとしてるの?それはないでしょう、と押さえてしまった。
ゆだねなければ、と思うが、恥ずかしい、という気持ちはストップをかける力が強いようだ。
名前を聞かれたときも、まさひこ、といいつつ、ぶっきらぼうに喋るのが、少し抵抗があった。
あまり社交的な人でない感じがした。
私が小さい頃に一緒にいるようになったようで、理由も子供の頃の私が寂しそうにしていたからだそう。
まさひこさんがあの世の人にどうやってなったのかは分からない。
奥さんに先立たれ、一人娘がいたが、仕事で何日も家を空けることがあり、男手一つで育てられず、
養子にだしたらしい。
養子先の家は経済にゆとりもあり、家柄も良いらしく、まさひこさんは出入出来なかったようだ。
そのまま娘とも会うこともなく、親だと名乗ることもできず、でも娘の幸せのためなら当然と思っていたようだ。
奥さんとも娘さんとも、今なら会えますよ、と言われて困惑していた。
ただ、奥さんには苦労かけたまま先立たれたのと、娘を手放したことをすごく詫びたかったようだ。
なかなか暗い世界から明るい方へ進めなかった(進もうとしても同じ濃さの闇が続いていた)
なんどかくじけそうになり、あきらめかけてる時に、もう赦されているのですよ、と聞いて再び上を向いた。
遠くにかすかに明るい光をみつけたが、まさひこさんは、自分の目を疑っていた。
すぐには喜ばず、もう少し近づいても消えないのを確認してから、明るくなってきたのを認めた。
そして、観音様を一瞬みたような気がした。
奥さんの紗代子さんは美人さんだったのだろうか、まさひこさんは泣きながら奥さんの手を取り、謝っていた。
お子さんは近くには見えなかったが、親類の人もいるでしょ、と聞こえ
左上にちょっといかつい、でもひょうきんな顔のおじさんがニカッと笑っていた。
それをみたまさひこさんは、おー、懐かしいな!と声をかけていた。
かよちゃんの時ほど、明るさは感じられなかったが(かよちゃんの時は、一瞬目を開けられないほどのまぶしさだった)
まさひこさんがなかなか認めなかっただけで、前の方には明るい光があった。
そして家族や親類、友人?と手を取り合って、これまでの分も味わうかのように楽しげに進んでいった。
少し幽体離脱のような、上の方に抜けていくなー、と感じていたタイミングで、読経が始まり
後半にはもうまさひこさんの存在を感じなくなっていた。
そうして無事に初めての般若古は終了したが、これで終わったわけではない。
まさひこさんは向こうの世界へ行く前に、あと4人いる、と言っていた。
女の人が二人、ひとりは中年中肉中背、もうひとりはやや小柄な人にみえた
その向こうの方に二人いるように見えたが、暗くてよくわからなかった。
近いうちにその方たちとも対面する日が来るのだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です